記憶に残る広告、その効果

その昔、Robert Zajonc(ロバート・ザイアンス)という学者が「Mere Exposure Effect(単純接触効果)」という研究論文を発表しました。(1968年)
この研究は「対象への接触回数の増加が、その対象への好意度を高める。たとえば、よく会う人や、何度も聞いている音楽は、好きになっていく傾向にある。」ということをテーマにしたもので、その研究結果は、のちに「単純接触効果」「ザイアンス効果」として、多くの人に知られることになりました。
私は、会社員時代、営業マンとして働いていましたが、その当時、上司から、よくこんなことを言われていました。
「おい!時枝!会社でボーーっとしてるくらいだったら、営業に行け!用事なんてなくていいんだよ!会え!とにかく何度も何度も会え!何度も顔見せとけば買ってくれるんだよ!わかったか!ばかやろう!」
おそらく、当時の私の上司は、知っていたんでしょうね。ロバート・ザイアンスの「単純接触効果」のことを。
とにかく、「用事がなくても会ってこい!」って口うるさく言われました。
まぁ、当時、新入社員で、ザイアンスのことも営業のこともよくわかってなかった私は、「用事もないのに会えるわけねーだろ!ぼけ!」って思ってましたが・・・
しかし、それから10年以上経ち、独立して会社をつくってから、この「何度も何度も接触することの大事さ」を知る出来事がありました。
その出来事とは?

広告は、最初はまったく効果がないものでも、ある程度の期間、我慢して継続的に出し続けると、それなりの効果が出る。
という出来事です。
具体例を言います。
私が経営する飲食店「カフェ&バーNEXT」の広告を、あるタウン情報誌に掲載してもらったときの出来事です。
仕事柄、雑誌広告や新聞広告などの、いわゆる「紙媒体」の広告についても研究していますし、これまで何度も広告出稿したことがあるので、よくわかるのですが、正直、雑誌や新聞の広告は即効性がありません。
即効性がない。とは、どういうことか?
つまり、広告をだしても、すぐにはお客さんは来ない。ということです。
もちろん、例外はあります。
読者ターゲットが絞りに絞られた「業界紙」なんかは、その読者ターゲットにマッチした商品やサービスの広告を掲載すると、思わぬ効果を発揮する場合もあります。
が、一般的には、よほど上手な広告文を書かない限りは、支払った広告費に見合う結果を出すのは難しいです。
実際、私たちのお店の広告を、タウン情報誌に広告掲載してもらったときも、はじめて掲載してもらったときは「赤字」でした。
広告を掲載された雑誌が発売されて、1週間たっても2週間たっても、「雑誌を見て来ました」なんてお客さんは1人も現れない。
1ヶ月が経過して、広告を見て来店してくれたお客様は、わずか数名。
広告の使い方を理解していない社長さんだったら、おそらく「激怒」するか、「落胆」するか、まぁ、どっちにしろ「あの雑誌の広告はダメだ」と言って諦めるところでしょう。
ただ、私たちは、そこをグッと我慢して、まずは1年間、広告を掲載し続けました。
それこそ、最初の半年間は、ドブにお金を投げ捨てるつもりで。
なぜ、そんなことができたのか。
それは、「広告における単純接触効果」というものを正しく理解できていたからです。
私たちが広告をだした「タウン情報誌」は、毎月発売される「月刊誌」ですので、一定の数の「毎月、その雑誌を読んでいる定期購読者」がいます。
つまり、毎月、広告を出し続けると、毎月、同じ人に見てもらえる可能性が高い。ということです。
テレビコマーシャルなんかも同じことが言えますが、1回見たくらいでは、人は、その広告のことを、なかなか憶えたりしませんが、繰り返し繰り返し見ることで、知らないうちに、その広告を憶えてしまうのです。
あなたも、ひとつふたつ、記憶に残ってるテレビコマーシャル、あるでしょう?
あれは、何度も何度も目にしたり耳にしたりしてるから、知らないうちに憶えてしまってるんです。
そして、デパートなんかに行ったときに、思わず、その商品を選んでしまう。
他のは知らないけど、これは知っている。
そんな理由で選んでしまいがちなのが、人間なのです。
だから、私たちも、目先の結果は求めず、繰り返し繰り返し見てもらうことを目的に、タウン情報誌に、毎月毎月、広告を出し続けた。
そうしていくうちに、「ここのお店って、毎月、雑誌にのってるから、かなり人気なんでしょ?」と言ってくださるお客様も続々と現れ、そこから「クチコミ」が発生し、さらに認知度が増し、グッと来客数も増えてくる。
そうなると、毎月の広告費は、余裕でペイできるようになるわけです。
いかがでしょう。
これは、私たちのお店だけに限らず、他にも、最初は「ドブにお金を捨て続ける覚悟」で、広告を出し続け、認知度アップ、イメージアップに成功したお店、会社は、たくさんあります。
たしかに、費用はかかります。
しかしながら、ビジネスというものは、時には、こういった長期的視野で物事を考え、目先のリスクを恐れない「勇気」も必要です。
私が発信する情報が、あなたの成功の手助けになれば、とても嬉しいです。
今後とも末永く宜しくお願い致します。